【連載】文具は別腹 特別編
文具社会科見学 クツワ編
2025.10.24

#文具は別腹 #文具は別腹特別編 #雑貨モノ知り #ステーショナリー
甘い物はいくらでも食べられるように、文具もいくらでも買ってしまう「文具は別腹」な方々。そんな皆さんの別腹を大いに刺激する文具コラム。ステーショナリー ディレクターとして色々な文具を見てきた私、土橋(つちはし)が、その使い心地も含めてご紹介していきます。(毎月第四金曜日配信)
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これまで学童文具を中心に展開しているというイメージの強かったクツワ。ここ数年、その印象が私の中で大きく変わってきている。学童文具に加えて大人が心地よく使える文具を次々に発売し、そのどれもがなるほど!と思えるものばかりなのだ。これはきっとクツワ社の中で何か変化があったのではと思い、お話をお伺いするために東京支社に向かった。
■少子化が一つの要因
2018年に社長が現在の寺浦浩之氏に変わったのが一つの転機だったという。そう話すのは、クツワ株式会社 営業部 名賀智博さん。創業家以外かつ異業種からの出身者で社長に就任したのはクツワの歴史の中でも初めてのことだそうだ。折しも急速な少子化が進み、学童文具中心だったクツワは今後どうやってこの状況を乗り切って行くべきかを考えた。そこでユーザーターゲットを広げることにした。
「子どもから大人までライフステージごとに寄り添う商品作り」
これをクツワのスローガンとして掲げることになった。とは言え、これまで学童文具を中心に作ってきて、すぐに大人向けの商品が簡単に作れるものでもない。手当たり次第取り組むのではなく、これまで学童文具で培ってきた技術や知識を生かせるものに焦点をあてることにした。

今回お話をお伺いしたクツワ株式会社 営業部 名賀智博さん
■クラウドファンディングの活用

私がクツワさんの変化を初めて感じたのはクラウドファンディングだった。クツワさんがクラウドファンディングをするんだと、それを見たときに意外な印象を受けた。文具メーカーがクラウドファンディングをするというのは珍しかった。加えてそこで発売されているものが、学童文具ではなく、大人向けの商品だったのにも目を引いた。
中でも最も人気を博したのが「タブラ」というアイテムだ。ビジネスパーソンが鞄やリュックに入れて、小物収納を便利にするバッグインバッグだ。
伸縮性のある素材を使い小物の収納がしやすい。どうしても小物は鞄の底に溜まりがちだが、ボードに収納することでモノを平面に配置し、さっと取り出せるようになる。
加えて裏面は書類フォルダー兼クリップボードにもなるという多機能ぶり。たくさんのユーザーからの支援が集まり、クラウドファンディングは大成功した。


なぜ、クラウドファンディングを行なったのか。それはテストマーケティングのためだという。大人向け商品を色々と企画しはじめたものの、果たして売れるかどうかの確信が得られなかった。確かに面白いけど、世の中に出した時に売り場でちゃんと定着するだろうか心配だった。市場に展開する前にクラウドファンディングに出して、ユーザーに受け入れられるかを試したのだ。
「タブラ」以外にもコンテナの「ビルダ」など、いくつもクラウドファンディングを行なった。そして確かな手応えを感じ大人向け商品の企画は本格的に始まっていった。
「タブラ」はその後定番商品として販売されている。
(現在ロフト店頭での販売はございません)
今回のお話を伺ったのは東京支社のワンフロアを広々と使ったショールーム。全体の半分くらいはクツワが従来から得意とする学童文具の数々。その一方で大人向け商品も半分近くまで商品数が増えてきている。
その中で私が最近注目している3つのプロダクトについて、そのこだわりをお聞きした。
■ヨンブンカッツ

これはA4サイズの紙、裏紙などをメモとして再利用できる便利アイテムだ。紙を切る+メモパッドとして使うがこれ一つで出来てしまう。A4の紙をガイドに合わせてカットする。
ハサミを使わず本体のエッジの部分でスパッとカットしていく。
これがとてもスムーズに、しかもキレイに切れていくのだ。これにはクツワが従来から販売している「アルミ定規」が活かされている。定規のエッジが45度になっていて、それにより紙をスムーズにカットしていけるものだ。


切り取ったA6の紙を「ヨンブンカッツ」のクリップにとじてそのままメモとして使っていける。
この商品を企画した時、クツワ社内では確かに面白いけど、売り場に並んだ時にユーザーにこの魅力が伝わるか、そもそもこれはどの売り場に並ぶのだろうかと、社内でも議論になったという。販売と併行してSNSで商品の使い方、便利さを発信していくことで徐々に広まり、ヒットへと繋がった。ちなみにロフトでは事務用品売り場のカッターの隣に並んでいるという。個人的にはクリップボード売り場やメモ売り場にも並んでいてもいいような気がした。

[ヨンブンカッツ 税込880円]
■プニュスパイラル

これも学童文具の知識・技術が大いに活かされた商品である。クツワでは「プニュグリップ」という学童向けのグリップがある。筒状をしていて鉛筆などには通せるが、少し太いペンには使えなかった。一部のユーザーの中には「プニュグリップ」の端っこを少し切って太軸にセットして使っている方もいたという。
大人でも使いやすいようにさまざまな太さのペンに対応したものとして「プニュスパイラル」は生まれた。
らせん状になっているのが特徴。このらせん構造には実はこだわりがある。
ただらせんにしただけではペンに巻いても外れてしまうことがあるのだ。
そこでらせんの両端を少し薄めに作っている。
こうすることでクルクルと巻いていった最初と最後を内側に巻き込めるようにしている。イメージとしては結び目を作るような感じだ。それがしやすいように薄くしている。こうしたことにより安定したグリップが得られる。

太軸だけでなく、デザインカッターやガラスペン、タブレット用のペンなど色々なグリップにも使われている。
[プニュスパイラル 税込528円]
■エルガバスタンド

もともと横にして使う「エルガバ」という商品があった。それを縦にした「エルガバスタンド」がこのほど新発売された。これもなるほどなペンケースだと思った。ペンケース市場には大きく開口部が広げられたり、立てることができたりとすでに色々と出てきている。もうこれ以上新しいものは出ないのではないかと思っていたところに、この「エルガバスタンド」を見た。なるほどこの手があったかと大きく頷いた。
まるで家具のキャビネットラックをデスクサイズに小さくしたような感じだ。限られたデスク空間でも場所をそれほどとらない。一番感心したのは、ペン、ハサミ、定規をはじめ、とりわけ小さな消しゴムやふせんなどの専用スペースがある。フタを閉じて鞄の中に入れて、いざ開いた時でも中身はゴチャゴチャとせず、それぞれが定位置にとどまるようになっている。この商品はクツワが学童文具で培ってきた縫製技術が活かされている。

[エルガバスタンド 税込2,310円]
現在のクツワの商品企画メンバーは大幅な若返りをしている。そうしたこともここ数年のクツワの快進撃を支えているのだろう。

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記事配信日:2025/10/24




