#文具は別腹 #雑貨モノ知り #文具は別腹特別編 #ステーショナリー
甘い物はいくらでも食べられるように、文具もいくらでも買ってしまう「文具は別腹」な方々。そんな皆さんの別腹を大いに刺激する文具コラム。ステーショナリー ディレクターとして色々な文具を見てきた私、土橋(つちはし)が、その使い心地も含めてご紹介していきます。(毎月第四金曜日配信)
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紙好きの方ならご存知の方も多いという竹尾という会社。1899年創業の120年以上の歴史をもつ紙の専門商社。様々なファインペーパーを取り扱い、印刷会社や出版社などに供給している。竹尾では見本帖というショップを東京・大阪・福岡に構えている。東京の店舗では約300銘柄2,700商品ものファインペーパーを取り揃え、一枚から買うことができる。デザイナーなどのプロの人たちが紙選びをする場としてだけでなく、私たち一般ユーザーでも買うことができる。私も何度も買いに行ったことがある。

そうした紙を知り尽くした竹尾が「TAKEO PAPER PRODUCTS」としてノートやレターセットなどのプロダクトの企画・販売にも力を入れている。今回の文具社会科見学では、そんな竹尾の紙にこだわった商品について色々とお聞きしてきた。

左からペーパープロダクト事業部、若林 直美さん、竹尾 香世子さん、猪瀬 貴之さん
■ 一枚から買える「ペーパーパレット」

(画像:池袋ロフト)
竹尾とロフトの取り組みは意外と古い。ロフトの前身である西武百貨店時代から始まっている。それが「ペーパーパレット」だ。これは一枚から買うことができるカード・封筒だ。西武百貨店池袋店で1980年に始まった。当時欧米で紙の計り売りがされており、日本でもできないだろうかと竹尾に相談を持ちかけたのがきっかけだという。
その後ロフトの店舗でも販売され現在に至る。専用の什器に色とりどりのカードや封筒が入っている。カードは小さいメッセージカードからポストカードなど7サイズ。封筒も4サイズ。それらが最多で60種類もの様々な紙から選べる。色もそして表面の質感も違う紙が豊富に揃っている。ロフトでギフトを買い、それに添えるカードを買うときに一枚から買うことができる。またウエディングのカードとしても人気があるという。今でこそインクの色やペンのカラフル化は一般的になっているが、45年も前からはじめていたのだ。

■ 薄いのに風合いがある「オニオンスキンペーパー」

玉ねぎの薄皮に似ていることから、そう名付けられている紙「オニオンスキンペーパー」。とても薄く、独特なシワがあるのが特徴だ。以前、この紙はいろいろな製紙会社で作られていた。しかし次第に製造するところも少なくなっていた。日本では唯一製造していた「サンバレーオニオンスキン」が機械の老朽化を理由に2010年に製造を終了してしまった。ちなみに「サンバレー」という名前は作っていた会社の社長が「谷さん」ということから名付けられたという。

竹尾で紙製品のアートディレクターを務めている竹尾 香世子さんは、このままオニオンスキンペーパーを終わらせたくないと、復活に動き出した。協力してくれる製紙会社を見つけ、試行錯誤の末完成させたのが「ケイトジョーオニオンスキン」である。実は、竹尾 香世子さんは昔からオニオンスキンペーパーのファンで、中学生時代に買ったオニオンスキンペーパーの便箋を今も大切に持ち続けているほどだ。


竹尾がTAKEO PAPER PRODUCTS オリジナル用紙として新たに作った「ケイトジョーオニオンスキン」は厚み(重み)が35g /平方㎡。一般的なコピー用紙が65g /平方㎡なので、およそ半分くらいしかない。表面はオニオンスキンならではのシワが美しい。シンプルなホワイトとペールブルーの2色。個人的にはペールブルーに万年筆のブルーインクで書いた時の色合いが好きだ。


このオニオンスキンペーパーは生産がなかなか難しいという。生産ロットによって微妙に色合いや表面のシワの出具合が異なってしまう。そうした個体差も含めて私はオニオンスキンペーパーの味だと感じている。
何枚ものオニオンスキンペーパーを重ねたノートはフカフカとしている。その上にペン先を添えて書くと、紙がやさしく沈み込んでいく。この感覚が気持ちいい。他の紙ではちょっと味わえない書き味だ。さすがに裏面には文字が透けて見えるが、独特な風合いが楽しめる。
ノート以外に各種レターセット、そしてシステム手帳のバイブルサイズリフィルもある。今後はM6サイズのリフィルも展開予定だという。
■ 紙のペット「PÉPET」

これは紙で作られた手乗りペットである。触れるとクタッと横に後ろに首がしなだれていく。その動きが可愛らしい。そして触り心地が気持ちいい。大小400枚の紙を重ね合わせて作られている。一枚一枚の紙の間には小さな紙を挟み込んでいる。これにより独特なクタッとした動きを生み出している。その曲がり具合によって感触の違いが生まれる。それらの紙を中央で水引という紙で作った紐で繋げている。ベース部分と顔は木で作られているが、それ以外は全て紙。紙は木から作られているので、同じ世界観で作られているとも言える。色とりどりに見えるが、意外と使われている色数は少なく、3色や5色だという。

紙の書き心地は日々私も楽しんでいるが、紙のかわいい心地よさはこの「PÉPET」ではじめて味わった気がする。ぜひ、一度触ってみてほしい。紙の新たな心地よさを教えてくれると思う。


[PÉPET 税込19,800円]
販売店舗:梅田ロフト
■ 紙のカードケース「matou」

これは紙で出来たカードケース。芯材を一枚の紙で覆いゴムバンドでとめているだけというシンプルな作りだ。数千と種類があるファインペーパーが主役になれるプロダクトを、というコンセプトのもとデザイナーの草桶 開さんの元コメントにより考え出された。

名刺入れとしてだけでなく、交通系ICカードなどをまとめておくカードケースとしても活用できる。名刺なら10枚くらい収納できる。紙なので耐久性が気になるところだが、交通系ICカードを入れて毎日自動改札にタッチし続けて6ヶ月経ったものを見せてもらったが、全く問題なかった。意外と丈夫だ。

ゴムバンドがしっかりと効いていて、いちいち大きく広げなくても出し入れがしやすい。差し込み口が少し段差になっているので差込みがしやすい。9種類から選べる。
■ 廃番となった紙を蘇らせた「MOTTAINAI MEMO」

2023年ロフトで開催された文具イベント「メモマルシェ」で先行販売された「MOTTAINAI MEMO」。すでに触れたように竹尾では数多くの紙を扱っている。その中で、廃番や廃色となってしまう紙がどうしても出てきてしまう。これまでそうした紙はリサイクルに回すしかなかった。それをもう一度商品として蘇らせたのが「MOTTAINAI MEMO」である。

これが予想以上の売れ行きを見せ、現在では第7弾を数えている。様々な事情で廃番になってしまった紙だが、紙単体としてはどれも美しいファインペーパーである。端材などを使ったものではない。カラフルな3種類の紙がセットされており、中には表面にエンボス加工のされている紙があったりと新鮮さもある。楽しみながらリサイクルに貢献できる。


[MOTTAINAI MEMO 各税込550円]
★ネットストア「MOTTAINAI MEMO」の一覧はこちら
紙のことを知り尽くした竹尾のペーパープロダクトの数々。紙についての奥深さ、歴史を色々とお聞きした。紙には色々な可能性があると強く感じた。ロフトの店頭でぜひそれぞれの紙の魅力を手で味わってみてほしい。
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記事配信日:2025/6/27