#文具は別腹 #文具は別腹特別編 #雑貨モノ知り #ステーショナリー
甘い物はいくらでも食べられるように、文具もいくらでも買ってしまう「文具は別腹」な方々。そんな皆さんの別腹を大いに刺激する文具コラム。ステーショナリー ディレクターとして色々な文具を見てきた私、土橋(つちはし)が、その使い心地も含めてご紹介していきます。(毎月第四金曜日配信)
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文具の作り手であるメーカーを訪問してお話をお聞きする「文具社会科見学」。今回は東京大井町に本社を構える三菱鉛筆さん。
今年発売され話題を呼んでいる「uniball ZENTO」について興味深いお話を色々と伺ってきた。ボールペンの書き味はもう開発され尽くされたと思っていたが、まだまだ新しい書き味があったと、そう教えてくれたボールペンである。

※一部の商品は大変ご好評をいただき欠品いたしております。
入荷次第順次販売しておりますので、ご了承ください。
■ uniball ZENTO

お話を伺ったのは三菱鉛筆株式会社 商品開発部にてuniball ZENTOの企画を担当した高嶋さん(右)、板津さん(左) 。
商品コンセプトは『「かく」ひとときを心地よく。』開発にあたり多くのユーザーにヒヤリングをしたという。色々なシーンで文具が使われている中で、こんな声があったそうだ。夜子供を寝かしつけた後、ようやく自分の時間を持つことができ、楽しみにしていた手帳タイムを過ごすことができる。ユーザーの間では「手帳する」という言葉もあるくらいに、それはまるでデザートを食べるときのような、とっておきな時間なのだという。
そうした書くひとときを心地よい時間にするペンを作ろうと「uniball ZENTO」の企画はスタートした。なるほどボディを見るとやさしさにあふれている。ノックをする時に指があたるところを少し広くして指あたりを優しくしている。さらにノックを押し切った時に触れるノックの根元もなだらかな丸みを帯びている。ペンを手に取り書き出そうとした、その瞬間から心地よさが感じられるようになっている。

「ふだん私たちはスマホやパソコンなどで情報過多になっています。ペンを持つときはそうした忙しさから立ち止まって思考を整理する時間なのではないかと思いました。デジタルはキーボードをたたくとだれがやっても同じ文字が入力されますが、ペンを持って書くときは自分なりの文字を作っていきます。そんな書くシーンを心地よくするために、筆記具をつくってきた私たちにできることを提供したいと思いました」と高嶋さん。

「uniball ZENTO」という商品名にも、その想いは込められている。「ZEN」という言葉は、さまざまな着想のなかで選ばれた。例えば海外でも浸透している「ZEN(禅)」という考え方に加えて、「然」や「善」をはじめとする多様な意味合いも含み、ありのままの自然な状態や、自分にとって心地よく、ちょうど良いバランスを大切にする想いを込めている。そこから「uniball ZENTO」と名付けたと板津さんは話す。

■ 全く新しい水性インク

心地よさの追求は書き味によく現れている。一文字書いただけで「あれ!これはなんか心地よい」と私自身すぐに感じた。サラサラとした書き味に加え、タッチのやわらかさもある。これまで私が書いてきたものとは違う感触が手の中に広がった。

その書き味から、これはてっきりゲルインクボールペンだろうと感じたが、水性インクのボールペンだと聞かされ驚いた。というのも一般に水性インクボールペンというと、サラサラとした書き味はあるが、紙にペン先があたった時のカツカツとした感触があり、筆跡も少し滲んで太くなるものが多い、そんな印象があった。
しかし、今回の「uniball ZENTO」はその私の知っている水性インクボールペンとは大きく違った。ペン先を走らせた時の感触にやわらかさがあった。水性インクのあのカツカツはなく、紙とペン先の間にまるでクッションでもあるようなタッチを感じる。そして筆跡もにじみが見られず、すっきりとした線になっている。

板津さんによると、この書き味は新しく開発された「ZENTOインク」によるものだという。

インクには「POA界面活性剤」というものが配合されている。これにより書いた時にクッションのような働きをしている。それは紙にペン先があたった時のクッションだけでなく、ペン先でボールをかしめているチップとの隙間でもクッション作用を生み出しているという。
さらに「引き寄せ粒子」というものも配合されている。こちらは書いた時の筆跡がこれまでの水性インクのようにじんわりとにじんで太くなるのを防いでくれている。この引き寄せ効果は、線の太さだけでなく紙の内側への染み込み具合にも効いているという。つまり書いた時の紙の裏面へのインクの抜けもできるだけ防いでくれているという訳なのだ。
水性インクの良さをさらに向上させて、不満点を解決したものとなっている。書いていて少しでも気になることがあると、それに引きずられて心地よさにも影響を与えてしまう。そうしたことに一つ一つ向き合って改良したインクとなっている。
「uniball ZENTO」には後ほど紹介する4つのモデルがある。そのいずれにも0.5mm、0.38mmがラインナップされている。0.38mmというとどうしてもカリカリとした書き味になりがちだが、「uniball ZENTO」にはなめらかさがあった。手帳に細かく書いても心地よさが楽しめる。

■ 心地よい書き味を支える細かなこだわり

ベーシックとスタンダードモデルは、グリップにエラストマー加工がされている。握った時に指先がフィットする。それ自体は他のペンでもよく見かける。今回のペンではそれがたっぷりと設けられている。クリップの先端の少し下からペン先まで至っている。ここもこだわったところだと高嶋さんは話す。

「私はペンのかなり先端を握るんです。国内のユーザーだけでなく海外にも目を向けると様々な握り方をしている方がいました。そうした方々にも心地よさを味わっていただきたいと思ったんです」

またノックをしてペン先を出した状態のペン先のがたつきがほとんどなかった。ノック式ボールペンの中にはこの部分のがたつきが気になるものもある。「uniball ZENTO」ではそれが限りなく少ない。よくぞ気づいてくれましたと板津さんが目を大きくして喜んでいた。

「新開発した心地よいインクなので、それをしっかりと感じていただけるように、ペン先の内径をできるだけ狭くギリギリに作り込みました」
クッション性のあるなめらかな書き味ということで言えば、ゲルインクボールペンがある。それと今回の「ZENTOインク」は何が違うのか。高嶋さんによると、ゲルインクはゲル状のインクを書く時に力を加えてなめらかにしていく。「ZENTOインク」にはそのワンクッションがいらない。だから書き出しからかすれることがほとんどなくスムーズに書き出せる。確かに書いていて私もそれを感じた。
■ 様々な書くシーンに寄り添う4モデル
「uniball ZENTO」には4つのモデルがあり、心地よさを色々なモデルで楽しめる。
ベーシックモデル

「uniball ZENTO」を仕事などで使いやすい視認性の良いタイプ。ノックボタンの先端がインクの色を表している。黒・赤・青を瞬時に使い分けたい方にオススメ。

スタンダードモデル

こちらは先ほどのベーシックモデルと違いノックの先端にカラーインデックスはなく、それぞれのカラーでボディ全体がまとまっている。やさしいカラーバリエーションが揃っている。全て黒インク。
フローモデル

グリップのある先軸がアルミになっている。ベーシック・スタンダードモデルとはまた違ったフィット感がある。サラサラとした握り心地。きめ細かな加工によりギュッと握った時のグリップ感は良い。ベーシック・スタンダードモデルよりわずかに重量感がある。クリップもボディと同じ色をしている。ノートや手帳に挟むと、ペンの頭がちょこんと見える。クリップも含めて同じ色を目で楽しめる。全て黒インク。
シグニチャーモデル

三菱鉛筆のボールペンの中では珍しいキャップ式。マグネットでキャップを付け外しができ、後ろにセットするときもマグネットでカチッと収まる。さぁ書くぞという気持ちになる。比較的ショートボディで、しかも重心が中央にあるためペン先の取り回しが軽快。高級ペンとは違う満足感が味わえる。全て黒インク。

ぜひ一度書いてみてほしい。私が感じたようにきっと皆さんの手も驚くことと思う。

【ご紹介した商品】
・uniball ZENTO ベーシックモデル 0.38/0.5mm 税込275円
・uniball ZENTO スタンダードモデル 0.38/0.5mm 税込275円
・uniball ZENTO フローモデル 0.38/0.5mm 税込1,100円
・uniball ZENTO シグニチャーモデル 0.38/0.5mm 税込3,300円
・uniball ZENTOシリーズ一覧はこちら
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記事配信日:2025/2/28