コトキジ KOTOKIJI

【連載】「文具は別腹」その106

[文具社会科見学]ジュースアップ書きやすさの秘密

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#文具は別腹 #雑貨モノ知り #ステーショナリー

甘い物はいくらでも食べられるように、文具もいくらでも買ってしまう「文具は別腹」な方々。そんな皆さんの別腹を大いに刺激する文具コラム。ステーショナリー ディレクターとして色々な文具を見てきた私、土橋(つちはし)が、その使い心地も含めてご紹介していきます。(毎月第四金曜日配信)

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この「文具は別腹」はおかげさまで連載100号を超え、長期連載になってきた。
それを機にロフトのご担当の方からこれまでと違うことに挑戦してみましょう!と言われた。
たとえば、メーカーさんを訪問して色々聞いてみませんか?と。なるほどそれもアリかと思った。
文具の作り手であるメーカーさんによる情報は読者の皆さんにとってもきっと興味深いに違いない。
商品を実際に企画している方を訪ね、その文具の秘密やこだわり、それこそ目には見えないミクロの世界について私もぜひ聞いてみたい。
やりましょう、やりましょうということになり、その第一回目として私たちが訪問したのはパイロットさん(パイロットコーポレーション)。
「フリクション」や万年筆など様々な筆記具を製造販売しているメーカーである。

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■ 「ジュースアップ」ミクロの世界

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数あるパイロットさんのペンの中から今回選んだのが「ジュースアップ」。極細のゲルインクボールペンだ。
パイロット社内でも愛用されている方が多く、ロフトの店舗でも人気のボールペンである。

「ジュースアップ」は0.3mm、0.4mm、0.5mmの極細系だけをラインナップしている。
一般にペン先は細くなるほど、どうしてもカリカリとした書き味になりがちである。
しかし「ジュースアップ」は極細のペン先からインクがたっぷりと出てきて、「カリカリ」の「カ」の字もないくらいのなめらかさを私は感じる。どうして極細なのにそんなになめらかに書けるのだろうか。

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[ジュースアップ 各税込220円]


そこのところを(株)パイロットコーポレーション 筆記具企画課の長田さん(写真左)、栗原さん(写真右)のお二方にお聞きした。

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■ シナジーチップというパイロット独自のペン先

一番の理由は「シナジーチップ」によるものだという。文具好きの一度は耳にしたことがあると思う。
一般的にボールペンのチップ(先端のボールとそれを支える部分)には2種類の形がある。
真横から見るとその違いが良くわかる。一つは山のようになだらかなコーンチップ(写真左)、そして文字通りパイプのような形をしているパイプチップ(写真右)だ。

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そのそれぞれの良いところを取り入れた融合型が「シナジーチップ」(写真中央)なのである。

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ルーペで「シナジーチップ」を拡大して覗いて見ると、なるほどチップの根元は山のようなコーン状になっていて、その先端が細いパイプの形をしている。
コーンチップはペン先が太いのでインクをたっぷりと蓄えられ、ペン先に送れるインク量が多い。つまりなめらかに書ける訳だ。
パイプチップは先端のボールを支える際にパイプの先端にくぼみをつけている。
ちなみにパイロットの方はこれを「えくぼ」と呼んでいた。コーンチップのようにボールを抱え込むよりも、数カ所のくぼみだけで支えているパイプチップの方が摩擦が少なくクルクルと回転しやすい。

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そのそれぞれいいところが味わえるのが「シナジーチップ」なのである。
お手元の「ジュースアップ」のチップを一度じっくりと見てほしい。今、ご説明したことがよくおわかりいただけると思う。

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「ジュースアップ」で気持ちよく書けるのは、実はこうしたミクロの世界の細かな作り込み、こだわりがあったからなのである。

■ フリクション シナジーノックもある

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この「シナジーチップ」を持ったペンは「フリクション シナジーノック」もある。
0.3mm、0.4mm、0.5mmの極細系というラインナップ。
フリクションは書いては消すができるので、手帳に使っている人が多い。もっと細かく書きたいという声に応えたモデルである。
先ほどの「シナジーチップ」により、こちらも極細でもなめらかに書いていける。

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[フリクション シナジーノック 各税込275円]
[フリクション シナジーノック 8色セット 各税込2,200円]

「シナジーチップ」のこだわりを色々とお聞きしたが、個人的にはもう一つお伺いしたいことがあった。
筆記具メーカーさんは分厚い総合カタログがあり、「ジュースアップ」や「フリクション」以外にも様々な商品を作っている。その中で隠れた逸品がきっとあるはずだ。

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お聞きしてみると、2人ともしばし首を傾げながら頭の中でそれぞれに総合カタログを広げていた。
そして「布書きペン タフウォッシュ」をあげていただいた。いわゆる服などに名前を書くためのペンだ。
これはペン先がマーカータイプではなく、ボールペンタイプになっている。しかもインクは油性アルコールの速乾性とゲルインクの滲みにくさを兼ね備えたものだという。
服のタグといった小さいところにも書きやすくにじみにくいそうだ。まさに隠れた逸品だ。

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[布書きペン タフウォッシュ 極細 税込132円]

今回パイロットさんに色々とお話しをお伺いし、つくづく思ったのはペンがどんどん進化を遂げているということだった。私自身もとても勉強になり、まさに文具社会科見学そのものだった。

みなさんも今後「ジュースアップ」を手にして書くときに、あぁ今ペン先のミクロの世界では「シナジーチップ」が効いているんだなと思いを馳せてほしい。そうすると、いつもの手書きが少しだけ幸せなものになってくるのではないかと思う。

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*今後も定期的に「文具社会科見学」は続けていく予定です。




ご紹介した商品は、全国のロフト各店舗・ネットストア にて取扱っております。取り扱い内容は店舗により異なる場合がございます。詳しくはご希望の店舗までお問い合わせください。

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記事配信日:2024/05/24

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