甘い物はいくらでも食べられるように、文具もいくらでも買ってしまう「文具は別腹」な方々。そんな皆さんの別腹を大いに刺激する文具コラム。ステーショナリー ディレクターとして色々な文具を見てきた私、土橋(つちはし)が、その使い心地も含めてご紹介していきます。(毎月第四金曜日配信)
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先日のロフトアプリ会員※の皆さまにご協力いただいたアンケートで、万年筆を使ってみたいけど、どこからはじめればいいかよく分からないというお声が結構あった。そこで今回は万年筆のはじめ方・楽しみ方についてお届けしたいと思う。私土橋はかれこれ30年万年筆を使い続けている。ちなみにこの「文具は別腹」の原稿も毎回万年筆で書いている。他の筆記具とは違う、その魅力そしてオススメのファースト万年筆なども紹介してみたいと思う。
※2023年1月19日(木)時点ロフトアプリの会員ステージがシルバー・ゴールドの方に配信いたしました。(2023年1月20日(金)配信)
■ 万年筆の魅力とは?
そもそも万年筆ってどこがそんなにいいの?と初めての方は思うことだろう。私は以下の3つを挙げてみたい。
1. 独特な筆跡
2. 軽い筆圧で楽に書ける
3. 自分の文字が好きになれる
具体的に説明していこう。万年筆で書いた文字は特にブルー系のインクだと一つの文字の中に少し濃いところ、逆に薄いところが混在している。それは筆圧によってインクの濃淡が現れたものだ。書き手の息づかいが文字に封じ込まれているようにも感じられる。
そして、万年筆は極端なことを言えばペン先が紙に触れていれば書いていける。さすがにそれでは書きづらいので、少し筆圧を加えていく。私はボールペンで書くときのおよそ6〜7割くらいの筆圧で書くことを心がけている。つまり手に負担をそれほどかけずともサラサラと気持ちよく書いているのが万年筆なのである。
自分の文字にコンプレックスを持っている人は多い。私はそれを万年筆で乗り越えた。といっても、万年筆で文字がうまく書けるようになった訳ではない。どういうことかと言うと、先ほどの独特な筆跡による効果とも言える。万年筆で書くことによって私の文字がいつもとちょっと違って見えた。これはこれで味わいがあっていいではないかと、そう思えるようになったのだ。自分の文字が少しだけ好きになれた。そして万年筆で書くのがどんどん楽しくなっていった。
■ 万年筆はいつ使えばいいの?
さて、万年筆の良さはなんとなく分かった。でも万年筆を手にして書く機会なんて私にはなさそうだし、と次にそう思われているかもしれない。では次にこの点について皆さんを説得していきたい。私たちは1日の生活や仕事の中でいろいろな文字を書いている。手帳に書いたり、ノートやメモ、書類などなど。そうした中の1つだけでいいから万年筆で書くと決めてみるといい。私の場合は、朝一番のToDoリストは必ず万年筆で書いている。こんな感じでシーンを一つ決めるだけで毎日使う習慣ができていく。一日ずっと万年筆を使う必要は全くない。少しだけでいい。それで万年筆ライフは十分楽しめる。
■ はじめての方にオススメの万年筆
それではいっちょ万年筆を使ってみるかと思われたと想定して、次にどの万年筆から始めればいいのかについて解説していこう。今回はタイプの違う3本をピックアップしてみた。
■ 始めやすいプラチナ万年筆 プレピー
とにかくお手頃な440円〜という価格なので始めやすい。でも、万年筆の心地よさはしっかりと味わうことができる。万年筆のペン先は一般的に、EF(極細)、F(細字)、M(中字)、B(太字)という種類がある。そう言われても、はじめての人にはピンとこない。このプレピーでは、03(細)、05(中)と表記されている。こうした数字だといつも使っているボールペンのような感じで選びやすくなる。
買ってまずやることは、自分でインクカートリッジをセットすることだ。ここがボールペンと一番違うところだ。ボディを分解すると中にカートリッジインクが入っている。プラチナのカートリッジインクは先端に玉がある。その玉のある方をペン先ユニットの後ろ側にグイと差し込んでいく。
しばらくするとインクがだんだんとペン先の方へと流れていき書けるようになる。これで準備はOK。あとはいつもの6〜7割くらいの優しい筆圧で書いてみよう。今回紹介したタイプはブルーブラックインクの0.3。ご自分の好きなペン先、インクを選んでみよう。
[プラチナ万年筆 プレピー 細字 透明軸 税込440円]
[プラチナ万年筆 プレピー 細字 各税込440円]
[プラチナ万年筆 万年筆用カートリッジインク 各税込110円]
■ 楽しく使えるパイロット カクノ
スケルトンボディで万年筆の構造が手に取るようによく見える。こうして見ると万年筆がいかにシンプルな構造なのかが分かる。ステンレススチールのペン先とくし状の溝があるペン芯があるだけだ。
あとは先ほどと同じようにカートリッジインクをセットするだけ。なお、カートリッジインクは各社それぞれで仕様が違うので他社のものは使えない。ペン先は、EF(極細)、F(細字)、M(中字)がある。握るところは緩やかな三角軸になっている。そこに指先を添わせていくと自然と正しい握り方ができる。目印としてペン先にある顔が自分の方に向いていればOK。とても簡単にそして気軽に万年筆を楽しむことができる。
[パイロット 万年筆 カクノ 極細字 税込1,100円]
[パイロット 万年筆 カクノ 細字 税込1,100円]
[パイロット 万年筆 カクノ 中字 税込1,100円]
■ すっきりとしたデザインのパイロット ライティブ
こちらは不透明なソリッドボディ。落ち着きのあるデザインだ。一見するとメタルボディのようだが、プラスチック製。とても軽快に書いていける。使い方はこれまでご紹介した流れと全く同じ。付属のカートリッジインクをセットするだけ。このライティブのグリップにはガイドがないスッキリとした丸軸。カクノよりもいくぶん細くなっている。軸の太さはご自分で握ったときの落ち着きの良さで選ぶといいと思う。ただ、一般的にはボールペンよりかは万年筆の方が太軸のものが多い。イメージとしては多色ボールペンくらいといったところか。
先ほどのカクノ、そしてこのライティブも付属されているカートリッジインクはブラック。別売されているパイロットのブルーやブルーブラックのカートリッジインクに変えて使うこともできる。
[パイロット 万年筆 ライティブ 細字 各税込2,200円]
[パイロット 万年筆 ライティブ 中字 各税込2,200円]
[パイロット 万年筆用カートリッジインキ 5本入 各税込220円]
インクの色を変える場合はいったんペン先ユニットを水洗いする必要がある。水道で細めに水を出し、そこにカートリッジインクを外したペン先ユニットの上から水を流し込む。ペン先から残ったインクが薄められてドバドバと流れ出ていく。それが透明になるまで行う。水洗いが終わったら乾いた布で拭いて十分乾かす。
その上で次の色のカートリッジインクをセットしていく。同じ色のカートリッジインクを続けて使う場合、洗浄は不要だ。
このように万年筆はポイントさえ抑えれば全く怖くも難しくもない。万年筆で皆さんの筆記人生がさらに楽しいものになることを願っています。
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記事配信日:2023/05/26