甘い物はいくらでも食べられるように、文具もいくらでも買ってしまう「文具は別腹」な方々。そんな皆さんの別腹を大いに刺激する文具コラム。ステーショナリー ディレクターとして色々な文具を見てきた私、土橋(つちはし)が、その使い心地も含めてご紹介していきます。(毎月第二金曜日・第四金曜日配信)
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「書いている時の振動というストレス」とそう言われてもそんなの意識したことないという方がほとんどではないだろうか。でも、確かに振動はある。それを少なくするという新発想のボールペン「ブレン」が今、人気を集めている。
それにしても、日本の文具メーカーはユーザーがまだそんなに意識していないほんの些細ストレスまでもくみ上げて、それを解決してしまう商品を出すのが得意なのだと改めて思う。こうしたことが日本文具が世界からも大きな支持を得ている一つの要因なのだろう。

■ 有機的なフォルム

ペンのデザインというものは、長さにして15cmくらい直径は1cmほどという実はとても限られた空間の中で行われている。大方のデザインはすでにやり尽くされたと思っていた。今回の「ブレン」はそんな中でもこれまで見たことがない斬新なフォルムに仕上がっている。一言で言うなら、有機的な形状。

手にしてすぐわかるのは、ボディの前半分と後側では質感が違うところだ。前半分の主にグリップは指先が吸い付くような感触があり、握った時にしっくりくる。うしろ側はサラサラとしている。

■随所にブレない仕組み
ボールペンはいくつものパーツによって作られている。パーツは多くなれば、それだけブレやすくなるものだ。今回のブレンでは、それらひとつひとつのパーツ間においてブレない作りこみが徹底して行われている。一番大きいところでは、本体のボディとリフィルだ。リフィルを本体内側の構造によりできるだけすき間を少なくしてしっかりとホールドしている。確かにリフィルがブレない方が書いていて安心感がある。ブレない仕組みはまだある。ボディを振っても カチャカチャという音が一切しないのだ。ノック式ボールペンだとノック部分が可動するので、どうしてもカチャカチャとしがちなものだ。特にノックを押しこんだ時にカチャカチャすることがある。ブレンは、ノックしている時も、そしてノックを解除している時も音がしない。これは、これまでのノック式ボールペンではあまり見られない、厳密に言えば「聞かれない」ことのように個人的には思う。


ペン先を繰り出し、さぁ書き出そうという瞬間もブレなさは実感できる。繰り出されたリフィルの先端を指先でつまんで動かそうとしてもほとんど動かない。リフィルの先端を覆うペン先の穴がほぼジャストサイズに設計されているようだ。ペン先の穴のパーツが少々弾力のある材質になっているようで、そのこともリフィルを繰り出した時のフィット感を生み出しているのかも知れない。書いていて、このペン先がカチカチと動いてしまうとストレスを感じてしまうが、このブレンではそれがない。


こうしたブレない作り込みが随所に施されていることで、一体感のある書き心地が生まれている。
実際に書いてみて、ブレなさを陰ながら支えているポイントをもう一つ感じた。それはボディのフォルムだ。グリップのあるペン先側はボディは丸軸をしている。一方、うしろ軸は丸ではなく楕円になっている。握って書くとき、この楕円フォルムがいい感じに作用するのだ。どういうことかと言うと、ひとさし指の付け根にボディが触れる時、楕円ボディの少々広い面が程よくフィットしてくれるのだ。丸軸の時よりフィットする面が確実に広くなる。ペンを後ろで支えるこの構造によりグリップを安定させることができ、ブレない書き味をより一層味わえるようにしてくれているように感じた。


筆記時の振動を少なくするという新発想の「ブレン」。この良さは、使い始めてすぐに感じるというよりも、1週間くらい書き続けている中で、フト感じるというタイプのものだと思う。 書き心地改革なボールペンである。

[ゼブラ ブレン 0.7mm 各種 税込165円]
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記事配信日:2019/10/11